「木工手道具の基礎と実践」

はじめに

大工道具研究会編の「木工手道具の基礎と実戦」(誠文堂新光社)を購入しました。今日はその内容をご紹介します。

全体構成

本書の章立ては以下の通りです。

木工教室を訪ねる①
大工道具作りの現場から
木工教室を訪ねる②
写真でわかる大工道具
木工教室を訪ねる③
手道具の基礎知識
道具を仕立てる
作業の基本
継ぎ手の目的と種類
治具・定規の製作手順

「木工教室を訪ねる」の章をは省略させていただきました。では早速見ていきましょう。

大工道具づくりの現場から

ここでは、鉋、鑿、鋸、玄能の4つの手道具について、鍛冶職人の手による道具づくりの過程が写真とともに解説されています。

切れる刃物としての性能を、このようにほとんど人の手で生み出していく過程は、いつ見ても驚くばかりです。玄能のヒツ穴を、側面との間隔を0.1mmの誤差内で、正確に手作業であける技術。木でもこんな精度を出すことはおろか、まっすぐに穴をあけることすら四苦八苦する、私のような素人は圧倒されます。

写真でわかる大工道具

鉋、鑿、鋸、玄能といった手道具の、いわば写真集です。

13ページの中に、たくさんの種類の手道具が写真と共に紹介されているので、手道具1つあたりの解説は少なめですが、これから手道具に親しんでいこうという方にはとてもよい解説だと思います。眺めているだけでも楽しめます。

大工道具研究会編から出版されている本には、「鉋大全」や「鑿大全」など、それぞれの手道具に特化した本が出版されています。本書を読んで、鉋や鑿についてもっと知りたいと思われた方にはおすすめです。

職人が作る手道具は、写真でみるだけでも美しいものです。もっとも、道具は使ってこそ価値があるもの。使いこなせるようにならなければいけません。

手道具の基礎知識

ここでは、それぞれの手道具の構造や各部の名称などが少し詳しく解説されています。

また、これから木工を始める人のために揃えておきたい道具についても触れられています。

もっとも、最初からこれだけの道具を揃えるのはなかなか難しいでしょう。

木工の道具は、やはり、作りたいものを作る時に最低限必要なものから少しづつ買い揃えていくのがいいですね。

気がついたらこれだけ揃っていた、というくらいが趣味としてはよいのではないでしょうか?

もちろんそういった場合にも、本書のような解説書はよい参考になるでしょう。

刃物については、ホームセンターなどではなく、少し高くてもやはりしっかりした道具屋さんで購入したほうがよいと思います。

道具を仕立てる

この章では、鉋、鑿、玄能の3つの道具について、道具の仕立ての工程が丁寧に解説されています。

鉋も鑿も、買ってきてすぐに使えるわけではありません。使えるようにするための仕立てが必要になります。刃物である以上、砥石を揃えて自分で研ぐことは避けて通れませんし、それ以外にも多くの作業が必要になります。

玄能も、柄つきのものを購入する場合が多いと思いますが、道具屋さんで頭だけ買ってきた場合は自分で柄を挿げなければ使えません。

どれだけの道具が必要で、どういった作業が必要か、そういったことについても本書は参考になります。

本来、仕立ては自分で行うものですが、道具屋さんによっては、仕立てをしてすぐに使用できる、「直使い」という状態にしてもらえるところもあります。通常は有料です。仕立てる時間がなかったり、仕立ての手本がほしいときには活用しましょう。

仕立ての作業も木工の技量向上につながります。時間をかけてじっくり取り組みたいものです。

作業の基本

例えば角材の墨付けをするとき、どの順番で墨付けをされるでしょうか?

第一基準面から一周するのではなく、第二基準面を使って両方向から回すほうが線がずれにくいのです。

基準面をきちんと作っておくことが前提になりますが、こういった基本的なことも本書から拾えるでしょう。

後半の組み継ぎの実例は、実践するには相当の訓練が必要と思いますが、いつかチャレンジしたいですね。

継ぎ手の目的と種類

ここは、いろいろな継ぎ手の、イラストによる解説です。14ページの中にたくさんの継ぎ手の名称とその構造が解説されています。

治具・定規の製作手順

実践的な話を本書に求める方ならば、この章がいちばんおもしろいかもしれません。

治具や定規を自作するときの解説です。細かいステップで写真ともに解説されています。

木を切り、組む作業を経て、自分の木工に活用できる道具を自分自身で作る。こんなに楽しいことはないですね。

この中で、私が最初に作ることをおすすめするのは、木製スコヤです。

スコヤは木工では必要不可欠です。市販の金属製のものはやはり重いですし、材料にあたったときにキズをつけてしまうこともあります。

木製スコヤならば、軽いですし、材料にキズをつけることもほとんどありません。手になじんで、とても使いやすいです。

自分の好きな長さのものを作れるのもいいですね。

作り方は本書のように、妻手をつくるために木材を3枚貼りあわせる方法を用いてもよいですし、「鉋大全」に掲載されいるように一本の棒材に鋸で切り目をいれてもよいのです。

自分の作品の大きさに合わせた木製スコヤを早速作ってみましょう。

おわりに

本文にも書きましたが、大工道具研究会編から出版されている本には、「鉋大全」や「鑿大全」など、それぞれの手道具に特化した本が出版されています。本書を読んで、鉋や鑿についてもっと知りたいと思われた方にはおすすめです。

また、道具の仕立てに関する参考書として、手柴正範著、「大工道具仕立ての技法」という本もおすすめします。これはいずれまたこのブログで取り上げたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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